映像技術を含めたITの飛躍的な進歩により、カテーテル手術、デバイス植え込み手術の現場および手術手技を多くの人に対して、生中継という手法により即時および複数同時進行的に公開できるようになった。この進歩により、以前は一施設の手術室で限られた人数でしか見学できなかった手術を、より多くの人が同時に見学可能となり、また見学者からの質問に対して、その場で答えるカンファランス形式をとることで、術者の判断を遅滞なく学べるなどの観点から、学会や研究会で新たなセッションとして注目され、多くの分野でライブ手術カンファランス(以下ライブセッション)が広まってきている。
確かにライブセッションは、生中継であるが故の真実と手術の緊張感が見学者に伝わり、IT時代に即した表現法で、経験豊富な術者の手技を映像として目の当たりにすることができ、また時々刻々と変わる手術の中で術者の的確な思考過程や判断を学べることから、学術的には一定の意義はあると考えられる。しかしながら、臨床の場においては、患者を対象として手術を行う以上は、患者に最良の医療を提供するのは勿論のこと、患者の人権が守られなければならない。担当術者による手術に関する十分な説明がなされ、それにより患者が蒙るであろう利益および不利益についても情報を与え、最終的に手術の同意が得られた患者のみを対象に、常に安全に対する配慮を最優先に手術が行われるべきである。
現状では各学会や研究会のなかでライブ手術が行われてはいるが、ライブ手術の安全性確保、不慮の事故への対応を含め、ライブ手術についての一定の基準作成が必須であると考える。よって、CCT不整脈部門では日本不整脈学会アブレーション委員会の協力を得て、ライブセッションのあり方を多くの識者により徹底的に検討協議し、以下のガイドラインを設けることとした
ライブ手術において、何よりも安全対策は最重要課題であり、その施行にあたっては何事にも優先すべき点である。この点が少しでも不十分である場合は、ライブ手術の実施は控えるべきであると考える。これまでのライブデモにおいても、下記に既述する事柄について厳格に遵守して行ってきた経緯があるが、再度ここに明記して関係各位のさらなる認識を促す。
ライブ手術の施行にあたっては、患者のための医療の一環として行われていることを認識し、主催団体、術者、実施施設さらには参加者すべてが、医師およびパラメデイカルの教育がライブ手術の目的であることをしっかり把握し、患者の安全を第一に置くべきである。
実際の手術経過を収録したビデオを用いての時間をかけたカンファレンス形式の導入も教育的価値があり考慮されるべきである。一方、不整脈ライブ手術には、ビデオを用いた方法と異なり、時事刻々と判明する電気生理学的所見に対して専門医が互いに建設的討論を行い、患者の治療内容をより安全で質の高いものとすることができるメリットも存在する。ライブ手術とビデオ手術のこうした特徴を十分に理解し、手術の質の向上と患者の安全性を第一とした企画が行われるべきである。
2007年10月26日 | |
CCT Electrophysiologyガイドライン作成委員会 | |
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委員長 | 沖重 薫(横浜みなと赤十字病院) |
委員 | 相原 直彦(国立循環器病センター) |
池口 滋(滋賀県立成人病センター) | |
副島 京子(慶應義塾大学病院) | |
内藤 滋人(群馬県立心臓血管センター) | |
ガイドライン作成委員会顧問 | 大江 透(岡山大学医学部) |
小川 聡(慶應義塾大学) | |
平岡 昌和(東京医科歯科大学) |